開業届を出していない場合の確定申告時の注意点、延滞税と加算税について

・開業届を出さなかったら確定申告は必要ないの?
・自営業者やフリーランスは絶対に開業届を出すの?
・開業届を出した人と出さない人で確定申告に関する違いはあるの?

独立を目指している人の中には、開業届や確定申告のことを知りたい人もいるでしょう。

正直、開業届を出さずに事業をしても大丈夫です。

しかし確定申告では、開業届の有無で利用できる税制優遇が異なります。

開業届の有無で税額が数万円変わることもあるため、独立を考え中の人は開業届による税制面も知っておいた方が良いです。

確定申告以外でも、開業届の有無が影響する面はあります。

とは言っても、それらの内容を自分で調べるのは手間がかかりますよね。

そこで今回は、開業届を出さずに確定申告をした時の注意点、開業届を出さない時に起こるデメリットを中心に解説します。

開業届なしで確定申告をする時の注意点

最初に言ってしまうと、税務署へ開業届に出さなくても、法律上問題はありません。

現に開業届を提出せずに、事業をしている人もいます。

しかし、確定申告の面で注意すべきことは多いです。

ここでは、注意点を紹介します。

確定申告をしなくて良いわけではない

開業届を提出しなくても、確定申告の義務はあります。

無申告は「脱税」です。

脱税をするとペナルティが発生します。

具体的に、このようなペナルティがあります。

延滞税

延滞税とは、期日内に税金を支払わなかったことに対して、発生する税金です。

所得税などの国税に関する計算式はこちらです。

出典:国税庁

納付期限の翌日から2カ月以内の税金は①の式、納付期限から2カ月以上経過している税金は②の式で計算します。

①の延滞税の割合では「7.3%」と「特例基準割合+1%」を比べて低い利率を使い、②の延滞税の割合では「14.6%」と「特例基準割合+7.3%」を比べて、低い利率の方を使います。(特定基準割合の概要は延滞税の割合に載っています)。

つまり、納付期限から支払うまでの日にちが長くなるにつれて、延滞税の額も高くなるのです。

仮に、所得税20万円を納付期限から30日経った後に納税。延滞税の割合が7.3%だった場合は、20万円×7.3%×30日÷365日で、延滞税は1,200円となります。

加算税

延滞税の他に加算税も発生します。

ここでは、個人事業主に関係する加算税を3つ見てみましょう。

 

  • 過少申告加算税

確定申告をしたが、確定申告受付終了後に、修正申告や更生をした時に発生する加算税です。

税率は10%ですが、期限内に申告した税額や50万円を超える税額があった場合は、一部15%になります。

3つの中で、最も税率が低い加算税です。

 

  • 無申告加算税

期限内に確定申告をしなかった人に、課せられる加算税です。

税率は15%ですが、50万円を超える部分は20%です。

しかし、過去5年以内に無申告加算税or重加算税を課された人は、それぞれ10%ずつ加算されるため、税率は25%と30%になります。

 

  • 重加算税

重加算税は、悪質性が高かった人に該当する加算税です。

経費を偽ったり、収入を隠ぺいしたりなど、故意で脱税をしたと認められた人に適用されるケースが多いです。

過少申告加算税や不納付加算税に該当する箇所は35%、無申告加算税に該当する箇所は40%加算されます。

なお無申告加算税と同様、過去5年以内に無申告加算税or重加算税を課された人は、それぞれ10%ずつ加算されるため、45%と50%になります。

 

無申告でもバレないと思う人もいるかもしれませんが、マイナンバーで個人情報を管理しているため高確率でバレます。

脱税が発覚すると、税務調査の頻度が増える場合があるようです。

過去の脱税履歴は税務署のデータに残ります。

それを防ぐためにも、確定申告は毎年行いましょう。

青色申告時の控除を受けられない

青色申告時の控除も、開業届を出した人にしか認められていません。

青色申告とは、税制優遇がある申告のことです。

青色申告のルールに則って確定申告をすると、所得から最大で65万円控除できるため、節税になるのです。

しかし開業届を提出していない人は、無条件で白色申告となるため、青色申告の税制優遇は利用できません。

結果、同じ金額の所得でも納税額に数万円の差が出ることもあるのです。

なお、青色申告の詳しい内容は、こちらの記事にも載っています。

関連記事>>フリーランスの青色申告の仕方を解説!概要・メリットとは?

結局、青色申告の申請時に開業届を出す

事業をする人の大半は、節税ができる青色申告を選ぶため、青色申告をする時に開業届を出すのが王道パターンです。

なお、青色申告をする時は「所得税の青色申告承認申請手続」の提出が必要で、青色申告をする年の3月15日までに提出しなければなりません(1月16日以降に事業を開始した場合は、青色申告をする年の2カ月以内)。

よって開業届も、この時期に合わせて提出する必要があります。

開業届なしだと確定申告以外でも不利益を被るかもしれない

確定申告以外で、不利益を被ることもあります。

どんな不利益を被るか見てみましょう。

屋号入りの銀行口座を持てない恐れがある

開業届がない場合、金融機関から事業をしていると認めてもらえず、屋号入りの口座を持てない確率が高いです。

事業をしている証明書類が必要になるため、開業届を出していない人が屋号入りの口座を作るのは難しいでしょう。

ちなみに屋号入りの銀行口座を持つと、このようなメリットがあります。

プライベート用と事業用の収支を分けられる

プライベート用と事業用の収支を分けて管理できるため、確定申告の準備がラクです。

仮に、1つの口座で両方の収支を管理している場合、事業用の収支を一つ一つ抜き出さなくてはいけません。

しかし、プライベート用と事業用で口座を分ければ、事業用の収支項目を抜き出す作業が発生しないため、確定申告の準備に割く時間を短縮できます。

また税務調査で口座の内容をチェックされた際も、1つの口座で収支を管理した場合「プライベートで支払った費用を計上しているのではないか?」と疑われる原因になる恐れも…。

自分の身を守る意味でも、屋号入りの口座を作って、プライベート用と事業用の口座を別々に持った方が良いのです。

屋号入りの銀行口座の提出を求められた時に便利

何かを申し込んだ時に、屋号入りの銀行口座の提出を求められる例もあります。

代表例が、個人事業主用のクレカです。

事業主であることの証明が必要となるため、カード会社から屋号入りの口座を求められる確率が高いです。

近年では、犯罪の防止などで屋号入りの口座を提示するカード会社もあります。

その他に、個人事業主しか利用できないサービスを申し込む時に、屋号入りの口座が必要なこともあるようです。

法人・個人事業主用のサービスに申し込む時は、屋号入りの口座が必要になることも多いため、持っておいた方が便利です。

受注者からの信頼度が高くなる

仕事を依頼する側に立った場合、屋号入りの口座を持っていた方が、受注者からの信頼度は高くなります。

なぜなら、あなたが事業をしている信憑性が上がるからです。

報酬を振り込む際、受注者側の口座には、あなたの口座名が記帳されます。

あなたの個人名で記帳されると、本当に事業をしているか疑われる恐れがあります。

 

しかし屋号名で記帳されれば、あなたが事業主であると信じてもらいやすいです。

結果、受注者からの信用を得られるのです。

いくら仕事を発注しても、受注者が信用しなければ、請け負ってくれません。

受注者を安心させる意味でも、屋号入りの口座を持つべきです。

事業を続けている年数を示す証拠がない

仮に、同じ事業を10年間続けていると本人が言っても、開業届を出していなければ、事業を10年間継続していると認めてもらうのは難しいです。

なぜなら、開業届以外に事業を10年間続けていることを示す、公の書類がないからです。

過去の確定申告書を証明書代わりにする人もいますが、開業届を出していない人も確定申告をするため、事業を10年間継続している決定的な証拠にはなりません。

しかも確定申告書には、事業を開始した日時が載っていないため、事業を続けている書類として示すのには無理があります。

しかし、開業届には事業開始日が載っているため、控えを見れば事業を継続している年数が分かります。

よって、事業の継続年数をハッキリと示したければ、開業届は出すべきです。

開業届を出すと失業給付を受け取れない

 

個人事業主の中には、退職後に開業届を出した人もいます。

しかし、開業届を提出した後だと失業給付を受け取れません。

ここでは、開業届と失業給付の関係性を見てみましょう。

開業した事実を伝えずに失業給付を受け取るのは不正受給

開業届を出した事実を伝えずに失業給付を受け取ると不正受給です。

不正受給は、れっきとした「犯罪」です。

不正受給に該当すると、今までに受給された額の3倍の額を支払わなければなりません。

つまり、過去に50万円受給していた場合は、150万円の支払を求められるということです。

不正受給をした人の中には、逮捕された人もいます。

開業届を出した場合は失業認定申告書にて報告しなければならない

開業届を出した人は、失業認定申告書への記入が必要です。

失業認定申告書とは、失業給付を受け取る前に提出する書類で「5.就職もしくは自営した人又はその予定のある人が記入してください」の欄に、自営業を開始した日にちを記入します(自営業になる予定がある人も対象)。

開業届を出しても再就職手当を受け取れる可能性がある

開業届を出して失業給付を受け取れなくても、再就職手当を受け取れる場合があります。

再就職手当とは、新しく働き口が決まった人に支給される手当てです。

自営業者になった人も、再就職手当の対象です。

ちなみに、計算式はこちらです。

  • 失業給付の日数が3分の2以上残っている人
    →1日に支給される基本手当×失業給付の残り日数×70%
  • 失業給付の日数が3分の1以上、3分の2未満残っている人
    →1日に支給される基本手当×失業給付の残り日数×60%

失業給付の残り日数が多い人ほど、再就職手当の額も増えます。

つまり、失業給付が開始された日から早めに独立した方が、再就職手当を多くもらえるのです。

なお失業給付の残り日数が3分の1未満の人には、支給されません。

扶養保険に加入している人は、健康保険組合の事情も見ておいた方が良い

扶養保険に加入している人が、事業を始める場合もあります。

しかし、扶養保険に加入している人は、健康保険組合のルールも見た方が良いでしょう。

なぜなら、扶養保険から外れなければいけない場合があるからです。

代表例が「年収130万円の壁」。

これは年収が130万円を超えそうになったら、扶養から外れなければならない決まりのことです。

なかには、税金を支払わないように、年収が130万円を超えないように調整する人もいます。

ただし健康保険組合によっては、年収が130万円を超えていなくても、開業届を出した段階で扶養から外される場合もあります。

各健康保険組合によって、ルールが異なるためご注意ください。

扶養から外れて起こること

扶養から外れると、健康保険や年金保険料を自分で払わなくてはいけません。

よって、家計を圧迫する恐れがあります。

それが原因で生活苦に陥って、精神的に追い込まれる人もいます。

自身で解決できない場合は、扶養関連に詳しい税理士に相談したり、最寄りの役所へ相談するのも方法です。

まとめ

今回は、開業届なしで確定申告をする時の注意点などを紹介しました。
まとめると、こちらです。

✓開業届なしで確定申告をする時の注意点
①確定申告をしなくて良いわけではない
②青色申告時の控除を受けられない
✓開業届なしだと確定申告以外で不利益を被るかもしれない
①屋号入りの銀行口座を持てない恐れがある
②開業年数を示す証拠がない
✓開業届を出す時の注意点
①失業給付を受け取れない恐れがある
②扶養から外れる場合がある

開業届なしの状態だと、画定申告だけではなく、その他の面で不利益を被ることが分かったと思います。

しかし開業届を出すことのデメリットもあるため、提出するタイミングは重要です。

自営を考えている人は、あらゆることを想定したうえで開業届を出しましょう。

※本記事の内容などは2019年12月現在の情報です。